光通信を知ってほしい
はじめに
先進ネットワークシステム研究室について
工学院大学 情報通信工学科4年 先進ネットワークシステム研究室の佐藤です。 当研究室では無線ネットワークやフォトニック(光)ネットワークを中心とした新しいネットワークの設計や既存ネットワークの効率的な利用に向けた研究を行っています。 研究テーマとしましては以下をメインに進めています。
- フォトニックネットワーク
- SDN(ネットワーク機器の仮想化)
- 非常時の音声通信受付制御
- ネットワークセキュリティ
紹介内容
光ファイバの高性能さを知ってもらい、興味を持ってもらえたら嬉しいです。 冒頭の研究内容でいうところのフォトニックネットワークという分野にあたります。
以下、かなり簡略的な説明になっているところもありますが、容赦いただきたいです。
光通信・光ファイバってなんぞや?
光を使って情報を伝えること・通信媒体をさします。 現状、有線通信で世界最速の通信速度を出すことができます。
通信に用いる光ファイバは髪の毛ほどの太さのガラスやプラスチックなどでできた細い繊維です。 「クラッド1」と「コア」で構成され、中心のコアに光を全反射2させて通信をします。
光ファイバのなにがいいの?
信号の損失が少ない
電気信号を伝える同軸ケーブルは媒質(主に銅線)の性質から、1kmで電気信号の強さが半分になります。 それに対し、光ファイバでは光信号の強さが半分になるのは20kmです。 通信網では減衰した信号を増幅する機器を途中に設置しなければなりませんが、光ファイバならそういった機器の数を節約できます。 つまり光ファイバの誕生によって省資源で長距離通信が可能になりました。
通信速度が速い
光ファイバは、情報を光信号にして伝送します。 従来の通信では電線や同軸ケーブル3を通して、電気信号を伝送していました。
周波数という言葉を用いて考えれば光という通信媒体がいかに高性能かを理解できます。 周波数は1秒間の波の振動数を表しますが、この値が大きいほど多くの情報を乗せることができます。 例えば、通信における電気信号の周波数は大きくて100MHz4ほどですが、光信号の周波数は1THz5以上です。 ざっくり1万倍ほどの伝送速度を出すことができます。 さてそんな光通信ですがどんなところに用いられているかを次の章でご紹介します。
どこで使われてるの?
どこでも。
光ファイバは全世界6に張り巡らされており、一番身近な場所だと多くの戸建て・マンションへ引かれています。 ファイバそのものは地下を通っていたり壁の中に埋め込まれていたりするので、お目にかかることは多くはないです。 例えばNTTの光回線を用いた場合、NTTのビルから利用者宅へはいくつもの光スプリッタ7を介しながら接続されます。
下図のマンションやおうちへの配線の一例を示します。 図の中のONUは光回線終端装置といい、電気信号と光信号の変換を行います。 OLTは回線業者側に設置される電気信号と光信号を変換するための装置です。(2019/05/07 OLTの図と説明を追加)
我々が使っているスマホは電波[^7]による通信を行いますが、電波が届いた先つまり基地局8からは光ファイバで通信されています。 基地局には膨大なユーザの通信が集中するため、基地局以降の通信には大容量な通信に耐えうる光ファイバによる通信が必要なのです。
そこで基地局間通信のような大容量なデータを伝送することのできる光ファイバ技術の更なる改良と研究が求められています。
シングルモードファイバとマルチモードファイバ
光ファイバにはシングルモードファイバとマルチモードファイバという性格の異なる光ファイバがあります。 コア内の信号は信号の反射等で距離に応じて弱くなっていきますが、シングルモードファイバとマルチモードファイバでは減衰の度合いが異なります。 これらを使い分けて広範囲にわたって敷設されています。
シングルモードファイバ
単一の波長を伝送します。 コアの中心を主に通過し、信号同士の干渉もないため、長距離伝送の際の損失が極めて少なくなります。 数十キロにも及ぶ伝送にも耐えることができるので、基本的にはこちらのモードの光ファイバを用います。
マルチモードファイバ
複数の反射角を持った信号を同時に伝送します。
信号一つ一つの伝送速度は落ちますが、総合的なデータ伝送量を増やすことができます。(2019/04/26 不正確な情報であるため訂正)
シングルモードファイバと異なりコア端で複数の信号を反射させることと、信号の干渉等の影響で伝送距離は落ちてしまいます。
材質や安価であることから(2019/04/26 追記)建物内での使用に優れています。
研究室ではどういう内容を扱っているの?
光ファイバを用いた通信技術について研究室で研究を行っているのは全体の1/3程です。 研究室のHPから拝借した下図でいうところのココの領域で研究を行っています。
光波長分割方式
※興味があったら是非読んでみてください。
光通信では複数の光信号を重ね合わせて1本の光ファイバで送る技術(光多重)があり、更に大量のデータを伝送することができます。 光多重の中から光の波長(色)の違う光源を用いた光波長分割方式(WDM:Wave Division Multiplexing)を紹介します。 色とは言っても可視光ではないので見えません。 よって、ここで説明に用いる赤や青、黄色はあくまでイメージです。
波長が異なる信号を一度に伝送しても、送信側の合波器9・受信側の分波器10を介することにより信号をそれぞれ個別に認識し取り出すことができます。 この図の場合、1本の光ファイバで3つ分の伝送路を用意することができたということになります。 この波長の重ね合わせは使用する光ファイバによりますが、数個~数百個作ることができ、光ファイバの通信容量の拡大に貢献しています。
また、この光通信におけるWDM方式はコアネットワークとメトロネットワークにて使用されている技術です。
ネットワークの範囲について下表を参照してください。
ネットワーク類 | 範囲 |
---|---|
コアネットワーク | 長距離都市間、国家間通信網 |
メトロネットワーク | 都市内通信網 |
アクセスネットワーク | 数キロ程度の通信 |
最後まで読んでいただきありがとうございました。 研究室のことや紹介内容で質問等ございましたらコメント欄にてよろしくお願いします。